
「ピルの効果は避妊だけじゃないの?」
「ピルの効果について詳しく知りたい!」
「ピルはどんな原理で作用するの?」
ピルには高い避妊効果はもちろん、生理痛の軽減やPMSの改善などさまざまな効果があるのをご存じでしょうか。
本記事では、ピルの効果が作用する仕組みとともに解説します。
ピルの副作用についても合わせて解説しているため、ピルの使用を検討している方はぜひ参考にしてください。
ピルとは

ピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンを主成分とした薬です。
一般的にピルというと「低用量ピル」を指し、1日1回同じ時間に服用することで高い避妊効果を得られます。
ピルとその他の避妊方法について、正しく使用した場合のパール指数(※)を以下にまとめました。
方法 | パール指数(※) |
ピル | 0.3%(100人のうち0.3人が妊娠) |
銅付加IUD(子宮内避妊具) | 0.6% (100人のうち0.6人が妊娠) |
コンドーム(男性用) | 2%(100人のうち2人が妊娠) |
基礎体温 | 信頼できるデータなし |
避妊なし | 85%(100人のうち85人が妊娠) |
(※100人の女性がある避妊方法を1年間試した場合に妊娠する数)
他の方法と比べても、ピルの避妊効果の高さがわかります。
パール指数は、文献によって数値に若干の違いがあるものの、同じ方法で指数を算出しているため、他の避妊方法との比較の参考になるでしょう。
なお、膣外射精は避妊ではありません。カウパー腺液(射精前に尿道を通る無色透明の液体)にも精子が混ざっており、妊娠の可能性があります。
望まない妊娠を防ぐためにも正しい方法で避妊することが大切です。
避妊におけるピルの作用機序は?

作用機序とは、薬が作用する仕組みを指します。
ここでは、ピルがどのように影響し、どのような効果を与えるのか、その仕組みについて詳しく見ていきましょう。
まず、妊娠するには以下3つの過程を経る必要があります。
- 排卵する
- 精子が子宮内に侵入する
- 受精卵が子宮内膜に着床する
しかし、ピルに含まれている卵胞ホルモンと黄体ホルモンには、上記の過程を阻止する効果があるため、避妊効果が得られるのです。
具体的には次のような効果があります。
- 排卵を抑制する
- 精子が子宮内に入りづらい状態にする
- 受精卵を着床しづらくする
毎月排卵が起こるのは、脳が卵巣に指令を出して卵胞ホルモンと黄体ホルモンの生成を促すためです。
ただし、ピルにはこれらのホルモンが含まれているため、脳が「これ以上生成しなくても大丈夫!」と勘違いして命令をストップさせ、排卵がストップします。
また、卵胞ホルモンと黄体ホルモンには、精子が子宮内に入りやすくする作用や、子宮内膜を分厚くして受精卵を着床しやすくする作用があるのも特徴です。
しかし、脳からの命令がストップしていればこれらのホルモンが生成されないため、妊娠しにくい状態になります。
ピルには避妊以外にどのような効果がある?

「ピルは避妊のためのもの」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、ピルには避妊以外にもさまざまな効果があります。
ピルによって期待できる効果は次のとおりです。
- 生理痛の軽減
- 生理不順の改善
- 月経量の軽減
- PMS・PMDDの改善
- ニキビ・多毛症の改善
- 生理日の移動
それぞれの効果について、詳しく見ていきましょう。
生理痛の軽減
ピルを服用すると、生理痛を軽減する効果が期待できます。
生理痛の主な原因は、プロゲステロンという黄体ホルモンの分泌です。
プロゲステロンが多く分泌されると、子宮や血管が必要以上に収縮してしまうため、血液を排出するときの痛みが強くなります。
しかし、ピルにはプロゲステロンが配合されているため、体内でのプロゲステロンの分泌を抑えられ、子宮や血液の収縮を抑制してくれるのです。
なお、生理痛(月経困難症)の改善を目的としたピル(LEP)は、保険適用となる可能性があります。
そのため、生理痛がひどい方はピルの使用を検討してみると良いでしょう。
生理不順の改善
ピルには、月経周期を規則正しくする効果も期待できます。
急激な体重増加・減少、ストレス、睡眠不足などによってホルモンバランスが乱れると、月経が周期通りに来ないことも。
しかし、ピルを服用するとホルモンバランスがコントロールされるため、規則的に月経が来るようになります。
生理不順で悩んでいる方は、ピルの服用によって症状が改善されることがあるでしょう。
ただし、ホルモンバランスの乱れでなく、子宮や卵巣に問題がある場合はピルでは改善されないケースもあります。
どちらにせよ、生理不順が長く続いている場合は、病院を受診するのが良いでしょう。
月経量の軽減
ピルには月経量を軽減させる効果もあります。
月経は、妊娠せずに使わなくなった子宮内膜が剥がれ落ちる現象です。
そのため、子宮内膜が厚くなるほど月経時の出血量は多くなります。
子宮内膜は脳からの指令によって生成が促進されますが、ピルにはすでにホルモンが含まれているため生成されません。
また、低用量ピルに含まれるホルモンは、自然な月経のホルモンより少ないため、子宮内膜が厚くなることがなく、月経量を軽減できます。
「月経量が多く、夜安心して眠れない」「頻繁にトイレに行けない環境のため、経血が漏れていないか不安」といった方は、ピルを検討してみるのも良いでしょう。
PMS・PMDDの改善
ピルには、PMS(月経前症候群)や、その重症型のPMDD(月経前不快気分障害)の症状を改善する効果もあります。
生理の1~2週間前に次のような症状が見られる場合、PMSやPMDDかもしれません。
PMSの症状 | PMDDの症状 |
・食事の量が増える・甘いものが食べたくなる・集中できない・イライラする・身体がむくむ・乳房が張る | ・希死念慮がある・何をしても疲れる・不眠や過眠が続く・感情のコントロールができない |
PMSやPMDDは、排卵の前後で体内の女性ホルモンのバランスが大きく変わることによって起こりやすくなります。
しかし、ピルには女性ホルモンをコントロールするはたらきがあるため、PMSやPMDDの改善する効果が期待できるでしょう。
PMSやPMDDは月経がある女性であれば誰でも起こり得る病気です。
そのため、PMSやPMDDの症状でお困りの方は、産婦人科や婦人科を受診してみるのが良いでしょう。
ニキビ・多毛症の改善
ニキビや多毛症の改善が期待できるのも、ピルによる効果のひとつです。
生理周期の後半に多く分泌される黄体ホルモンには、皮脂を増加させる効果があります。
そのため、生理前や生理中にはニキビができやすくなるのです。
しかし、ピルには黄体ホルモンの生成を抑制するはたらきがあるため、皮脂の過剰分泌を防ぎ、ニキビを改善する効果が期待できるでしょう。
また、ピルに含まれる卵胞ホルモンには、ニキビや多毛症の原因となる男性ホルモン(アンドロゲン)の生成を抑制する効果があります。
生理日の移動
ピルを服用していれば、旅行や結婚式など大切な予定に合わせて生理日をずらすこともできます。
生理を早める・遅らせるピルの服用方法は次のとおりです。
ピルの飲み始め | ピルの飲み終わり | 注意点 | |
生理を早める | ずらしたい生理の1つ前の生理が始まってから5日目まで | – | 服用をやめると2~3日程度で生理がくる |
生理を遅らせる | ずらしたい生理予定日の5~7日前 | 遅らせたい期間の最終日 | 3週間以上遅らせるのは効果が不確実になる可能性がある |
一般的に、生理を早める場合は低用量または中用量のピル、生理を遅らせる場合は中用量ピルを用いる場合が多いとされています。
生理を意図的にずらせるため、生理を気にせず予定を存分に楽しめるでしょう。
ピルの副作用

ピルの服用によって起こり得る副作用は、次のとおりです。
- 頭痛
- むくみ
- 不正出血
- 吐き気
- 乳房の張り
ピルを飲み始めてすぐは、上記のような症状が出やすくなります。
しかし、1~3ヵ月程度ピルを飲み続けると症状が軽減することがほとんどのため、そこまで心配する必要はありません。
また、ピルの服用による重大な副作用として「血栓症」が挙げられます。
血栓症とは、血の塊(血栓)が血管内につまり、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす重大な病気です。
発症する頻度はかなり低いものの、ピルの服用を検討する際は、こうした副作用についてもしっかりと確認しておく必要があるでしょう。
ピルに関してのよくある質問

ピルの効果について、よくある質問をまとめました。
ピルの効果はいつから発揮される?
ピルの効果が発揮される期間は、求める効果によって異なります。
ピルの効果が得られる目安としては、次のとおりです。
求める効果 | 効果が出始める時期 |
避妊 | 1日~1週間 |
生理痛・PMS | 1ヵ月 |
ニキビ・多毛症 | 2~3ヵ月 |
避妊目的の場合、ピルが「Sundayスタート」か「Day1スタート」かによって効果が出始める時期が異なります。
生理が始まった週の日曜日から服用を始めるSundayスタートの場合は、1週間後。
生理が始まった当日から服用を始めるDay1スタートの場合は、服用当日から避妊効果が得られます。
また、生理痛やPMSなど生理に関わる症状の場合は、次の生理の時期まで効果が分からないため、1ヵ月程度かかるといえるでしょう。
ピルの効果はいつまで続くの?
ピルの服用をやめた場合、避妊効果はすぐに切れるものと考えましょう。
個人差はあるものの、ピルの服用をやめてから3ヵ月以内に排卵が再開される可能性は約90%です。
そのため、ピルの服用をやめた場合は直後から他の避妊方法を行う必要があります。
まとめ
今回は、ピルの効果や作用する仕組みについて解説しました。
ピルには避妊だけでなく、次のような効果が期待できます。
- 生理痛の軽減
- 生理不順の改善
- 月経量の軽減
- PMS・PMDDの改善
- ニキビ・多毛症の改善
- 生理日の移動
これらの症状でお困りの方は、ピルの服用を検討してみるのが良いでしょう。
スマイルレディースクリニックでは、以下のピルを取り扱っています。
ピルの名前 | 目的 | 期待できる効果 | 保険 |
トリキュラー | 避妊(OC) | 避妊生理をずらす | 適用外 |
マーベロン | 避妊(OC) | 避妊PMSの改善ニキビ・多毛の改善 | 適用外 |
ルナベル | 生理痛/月経困難症(LEP) | 生理痛の軽減PMSの改善ニキビの改善月経量の軽減 | 適用 |
ジェミーナ | 生理痛/月経困難症(LEP) | 生理痛の軽減PMSの改善生理をずらすニキビの改善 | 適用 |
ヤーズ | 生理痛/月経困難症(LEP) | 生理痛の軽減PMSの改善子宮内膜症改善 | 適用 |
「なんでも話せる通いやすい産婦人科」を目指しているため、避妊目的の相談はもちろん、身体の悩みを抱えている女性は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。