
つらい生理痛の治療には、低用量ピルの服用が効果的です。
低用量ピルに含まれる女性ホルモンの作用により排卵が抑制されるため、経血量の減少や生理痛の緩和などの効果が期待できます。
この記事では、生理痛に効果的な低用量ピルについて詳しく解説します。
低用量ピルの主な効果や種類、服用するときの注意点についてもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
生理痛には低用量ピルの服用が効果的

生理痛には低用量ピルの服用が効果的です。
ここでは生理痛が起こるメカニズムやピルが生理痛を緩和させる仕組みについて解説します。
生理痛が起こるメカニズム
生理痛は『プロスタグランジン』というホルモンが大きく影響しています。
プロスタグランジンは、子宮を収縮させることで経血を子宮外に排出する役割を持つホルモンで、過剰に分泌されると必要以上に子宮が収縮するため痛みが生じるのです。
低用量ピルには卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2つの成分が主に含まれており、これらが身体に取り込まれることで、必要なホルモンがすでに分泌されていると身体が判断します。
これによって生理痛の原因となるプロスタグランジンの過剰な分泌を防ぐことが可能です。
日常生活に支障が出る生理痛は月経困難症
生理の症状には腹痛のほか、腰痛や頭痛、めまいや立ち眩み、吐き気などがあり、日常生活に支障が出るほどの症状を『月経困難症』といいます。
月経困難症には『機能性月経困難症』と『器質性月経困難症』の2種類あり、それぞれ原因や症状の現れ方が異なるため注意が必要です。
タイプ | 特徴 | 原因 | 年齢 | 痛みを感じる時期 |
機能性月経困難症 | 身体に問題となる疾患がなくても現れる | 強い子宮の収縮 | 思春期の女性に多い | 月経1~2日目 |
器質性月経困難症 | 身体にある疾患が原因で引き起こされる | 子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの疾患 | 20代後半以降の女性に多い | 月経期間中 |
器質性月経困難症は子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの疾患が原因になって引き起こされるため、ただの生理痛だと思って放置しておくと病気の発見が遅れてしまう可能性があります。
日常生活に支障が出るほどの生理痛に悩んでいる方は、早めに病院を受診しましょう。
低用量ピルの主な効果

低用量ピルには主に4つの効果があります。
- 生理痛を和らげる
- 月経量の減少
- 月経不順の改善
- 月経前症候群(PMS)の緩和
ここでは上記4つの効果についてそれぞれ解説します。
生理痛を和らげる
生理痛はプロゲステロンの分泌量が多いことが原因です。
低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが含まれており、排卵を抑制します。
これによって子宮内膜が厚くなりにくくなり、経血量の減少や生理痛の緩和効果が期待できるのです。
ピルと聞くと避妊目的での使用を想像する方も多いかもしれませんが、近年は月経困難症の治療や生理周期の変更などの目的でも使用されます。
月経量の減少
低利用量ピルには子宮内膜の増殖を抑える効果があるため、月経量を減少させられます。
月経量の減少に伴い、過多月経による貧血症状の改善も期待できるでしょう。
過多月経による貧血症状には以下のようなものがあります。
- 動悸や息切れ
- 頭痛
- めまい
- 倦怠感
- 立ち眩み
- 食欲不振など
上記のような症状に悩んでいる方は、低用量ピルの服用により症状が軽くなる可能性があります。
月経不順の改善
低用量ピルの服用により、月経不順を改善できます。
月経不順とは、生理が3か月以上来ない無月経や月経周期が不規則になる状態のことです。
月経不順の原因は様々で、主な原因としては食生活の乱れ、無理なダイエット、ストレスなどが挙げられます。
低用量ピルには女性ホルモンのバランスを保つ効果があるため、服用することで生理周期を整えることが可能です。
月経前症候群(PMS)の緩和
低用量ピルには月経前症候群(PMS)を緩和させる効果も期待できます。
月経前症候群(PMS)は生理3〜10日前に始まる精神的または身体的な不調のことです。
主に以下のような症状が起こります。
- 情緒不安定
- イライラ
- 不安
- 眠気
- 睡眠障害
- 食欲不振・過食
- めまい
- 頭痛・腹痛・腰痛
- むくみなど
月経前症候群(PMS)は女性ホルモンの変動によって引き起こされるとされているため、女性ホルモンのバランスを保つ働きのある低用量ピルを服用することで、その症状を緩和させられます。
月経前の不快な症状に悩んでいる方は、低用量ピルの服用を検討してみると良いでしょう。
生理痛を和らげる低用量ピルには4つの種類がある

生理痛を和らげる低用量ピルには第一世代から第四世代まで4つの種類があります。
また低用量ピルには「避妊用(OC)」と「生理痛/月経困難症用(LEP)」の2タイプがあり、治療を目的としたLEPの場合は保険が適用されます。
種類 | 特徴 | |
第一世代 | ルナベルULDフリウェルLDシンフェーズ | ・ノルエチステロンという黄体ホルモンを含有・子宮内膜症や月経困難症の症状緩和に効果的 |
第二世代 | トリキュラーラベルフィーユジェミーナ | ・レボノルゲストレルという黄体ホルモンを含有・3相性ピルと呼ばれるもので、ホルモン含有量が3段階に増減する・ピル内服中の不正出血率が低下する |
第三世代 | マーベロンファボワール | ・デソゲストレルという黄体ホルモンを含有・1相性ピルと呼ばれるもので、ホルモンの量が一定・ニキビや多毛症にも効果的 |
第四世代 | ヤーズヤーズフレックス | ・ドロスピレノンという黄体ホルモンを含有・超低用量化されており副作用が少ない |
ここでは上記4つの種類についてそれぞれ解説します。
第一世代
第一世代はノルエチステロンという黄体ホルモンを含有したピルです。
第一世代のピルは以下の通りです。
種類 | 特徴 |
ルナベル(LD/ULD) | 月経困難症で保険適応があるピルルナベルULDはエストロゲン総容量が少ないため血栓症のリスクを軽減できる |
フリウェルLD | ルナベルLDと製造会社が異なるだけで同じ成分 |
シンフェーズ | サンデースタートピルと呼ばれる1錠目を日曜日から内服することで生理が週末にかかるのを避けられる |
子宮内膜の増殖を抑制する効果があり、子宮内膜症や月経困難症の症状緩和にも効果が高い特徴があります。
第二世代
第二世代はレボノルストレルという黄体ホルモンを含有したピルです。
第二世代のピルは以下の通りです。
種類 | 特徴 |
トリキュラー | 女性ホルモンの変化に合わせた3相性ピル第一世代のピルと比べて1周期中のエストロゲン総容量が少ない |
ラベルフィーユ | トリキュラーのジェネリック医薬品 |
ジェミーナ | 生理痛改善を目的としているホルモン量が一定の一相性ピル |
トリキュラーとラベルフィーユは3相性ピルと呼ばれ、内服中にホルモン含有量が3段階に変化する特徴があります。
生理周期の調節性も向上しており、ピル内服中の不正出血率が低いのもポイントです。
第三世代
第三世代はデソゲストレルという黄体ホルモンを含有したピルです。
第三世代のピルは次の通りです。
種類 | 特徴 |
マーベロン | 1相性ピルと呼ばれるもので、ホルモンの量が一定ニキビや多毛症の改善に効果的 |
ファボワール | マーベロンのジェネリック医薬品 |
男性ホルモン化作用が少ないため、ニキビや肌荒れ、多毛症に効果的な特徴があります。
第四世代
第四世代はドロスピレノンという黄体ホルモンを含有したピルです。
第四世代のピルは次の通りです。
種類 | 特徴 |
ヤーズ | 抗ミネラルコルチコイド作用を有した超低用量ピル月経困難症の治療に対する保険適応がある |
ヤーズフレックス | ピルを連続的に服用することで月経回数を減らせる |
ホルモン含有量の少ない超低用量ピルで、子宮内膜症や月経困難症の治療に適しています。
ニキビやむくみといった副作用の発現率が低いのもポイントです。
低用量ピルを服用するときの注意点

低用量ピルを服用するときの注意点がいくつかあります。
ここでは副作用や飲み忘れたときの服用方法などについて解説するため、低用量ピルの服用を検討している方はぜひ参考にしてください。
副作用を理解しておく
低用量ピルは生理痛を和らげられる薬ですが、ほかの治療薬と同様、副作用が現れる可能性がある点を理解しておく必要があります。
低用量ピルの主な副作用は以下の通りです。
- 頭痛
- 吐き気
- 不正出血
- 血栓症
頭痛や吐き気、不正出血の副作用は『マイナートラブル』といわれ、飲み始めてから1〜2か月に表れる確率が高く、身体が慣れてくることで徐々に症状が落ち着いてきます。
3か月以上症状が続く場合は医師に相談したほうが良いでしょう。
血栓症はピルの服用による重篤な副作用で、血管の中で血液の塊ができて血流を止めてしまう病気です。
以下の症状が現れた場合、血栓症の疑いがあります。
- 動悸や息切れ
- ふくらはぎのむくみや痛み
- 手足のしびれ
- 鋭い胸の痛み
- めまいや激しい頭痛
副作用が現れたら自己判断するのではなく、なるべく早めに医師に相談するようにしてください。
飲み忘れたときの服用方法
低用量ピルは1日1錠、決まった時間に服用します。
1日だけ飲み忘れてしまった場合、すぐに飲み忘れた1錠を飲み、その日の分も通常通り服用しましょう。
2日以上飲み忘れてしまった場合は服用をやめ、次の生理を待ってから新しいシートで飲み始めます。
低用量ピルの飲み忘れを防ぐためには、アラームや通知の設定ができるアプリを活用するのがおすすめです。
併用に注意が必要な薬がある
低用量ピルは併用に注意が必要な薬があります。
- 解熱鎮痛薬
- 結核治療薬
- てんかん治療薬
- 抗真菌薬
- 子宮内膜症治療薬
- 糖尿病治療薬
- 抗うつ剤
- ぜんそく治療薬など
上記の薬と低用量ピルを併用すると身体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、現在ほかの治療薬を服用している方は必ず医師に相談しましょう。
まとめ
生理痛がひどい場合は、低用量ピルを服用することで不快な症状を和らげられます。
低用量ピルは生理痛を和らげるだけでなく、月経量の減少や月経不順の改善、月経前症候群(PMS)の緩和などの効果も期待できます。
また低用量ピルには4つの種類があるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
スマイルレディースクリニックでは、患者様のお話をじっくりうかがい、LEP(ルナベル、ジェミーナ、ヤーズ)やジエノゲスト(ディナゲスト)、漢方など一人ひとりに合った治療方法を一緒に考えていきます。
もちろん鎮痛剤や生理痛用の薬(ズファジラン、ブスコパン)の処方も行っているため、生理痛でお悩みの方はぜひ気軽にお問い合わせください。