
中絶手術には身体的リスクと精神的リスクが伴います。
中絶手術を検討する場合は、これらのリスクをきちんと理解しておくことが大切です。
この記事では、中絶手術を受ける身体的・精神的リスクについて解説します。
リスクを抑えるためのクリニック選びのポイントもまとめているため、中絶手術を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
中絶手術で考えられる身体的リスク

中絶手術は安全性に十分配慮して行われますが、リスクもあります。中絶手術における身体的リスクは以下の通りです。
- 出血
- 生理痛のような痛み
- 麻酔による症状
- 感染症
- 絨毛遺残
- 子宮穿孔
- 子宮頚管損傷
- 腹膜炎
- 子宮復古不全
- 子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)
ここでは上記のリスクについてそれぞれ解説します。
出血
中絶手術を受けてから1週間〜10日程度、生理時のような出血が続きます。
出血量や出血の仕方には個人差があり、生理2日目と同程度の出血が続く方がいれば、ほとんど出血がない方もいます。
徐々に出血量が少なくなっていくのが一般的ですが、2週間以上経過してもおりものに少量の血液が混ざったり、出血量が多い状態が続いたりする場合はクリニックの受診を検討しましょう。
生理痛のような痛み
中絶手術後、生理痛のような痛みが数日〜1週間程度続きます。
これは手術によって子宮が元の大きさに戻ろうと収縮するために起こるものです。
痛みは軽度の場合が多いですが、強い痛みが出ている場合は、クリニックを受診して痛み止めを処方してもらいましょう。
術後の痛みは痛み止めの服用で抑えられる程度の場合が多いため、過度に心配する必要はありません。
麻酔による症状
中絶手術に使用する麻酔による影響で、以下のような症状が出ることがあります。
- 頭痛やめまい
- 吐き気や嘔吐
- 逆行性健忘
これらの症状は麻酔の副作用によるもののため、数時間から1日程度で治まることが多いです。
頭痛やめまい
麻酔が効きやすい方の場合、頭痛やめまいなどの症状が現れることがあります。
覚醒後30分程度で治まる場合が多いです。
めまいやふらつきがある間は一人で歩くと転倒の危険があるため、無理に歩き回ったりしないようにしましょう。
吐き気や嘔吐
吐き気や嘔吐も、麻酔が効きやすい方に見られる症状です。
クリニックによって対処が異なりますが、術後の点滴に吐き気止めが処方されている場合もあります。
吐き気や嘔吐などの症状も、術後30分程度で治まる場合が多いです。
症状が治まるまでは飲食を行わないようにしましょう。
逆行性健忘
逆行性健忘は、ごく稀に発症する麻酔の副作用です。
麻酔薬が身体に入ってからの出来事を忘れてしまう症状で、手術直後に話したことを覚えていない状態になることがあります。
多くの場合30分程度で治まることが多いため、不安に思う心配はありません。
不安が強すぎたり必要以上に怖がったりすると発症しやすい傾向にあるため、なるべくリラックスして過ごすことが大切です。
感染症
中絶手術は子宮頚管が広がっている状態で行うため、通常よりも感染症のリスクが高くなります。
感染症のリスクを抑えるためには、適切に殺菌消毒された器具を用いること、手術室が高いレベルで清潔な環境となっていることなどが必要です。
ただし細菌のほとんどない環境で手術を行ったとしても、患者様がクラミジア等の感染症に感染していると、骨盤腹膜炎などの感染症を併発することがあります。
万が一クラミジアなどの感染症に感染していた場合は、抗生剤を事前に投与することでさらなる感染症の併発を防ぐことが可能です。
繊毛遺残
繊毛遺残とは、中絶手術で一部組織を取り残してしまった状態のことです。
中絶手術は直接眼で確認しながら行えないため、ベテランの医師でも起こり得るリスクといえます。
特に子宮奇形や子宮疾患などによる変形・圧迫がある場合にリスクが高まりやすいです。
繊毛遺残を防ぐための対処法としては以下が挙げられます。
- 超音波検査によって子宮口内を適切に評価する
- 手術後に遺残がないか確認する
- 術後検診で遺残がないか確認する
クリニックによっては、搔爬法(医療器具により子宮の内容物を掻き出す方法)による手術に加え、吸引を行うことで細かな内容物を確実に取り除くよう工夫していることもあります。
子宮穿孔
子宮穿孔は、子宮に穴が開いてしまう合併症です。
穿孔が起こらないよう慎重に手術を行うため発生は極めてまれで、ほとんど起こることはありません。
子宮頚管損傷
子宮頚管損傷は、子宮頚管を急激に拡張したり、経験不足な医師が医療器具の取り扱いに失敗したりすることにより起こる合併症です。
損傷が小さい場合症状がほとんど出ないこともありますが、次回の妊娠時に子宮頚管無力症を引き起こす恐れがあります。
子宮頚管無力症は子宮頚管が開いてきてしまう状態で、流産や早産の原因になることがあるため注意が必要です。
日本産婦人科医会やWHOでは、急激な子宮頚管の拡張を防止するための術前処置が推奨されています。
腹膜炎
中絶手術の際に子宮穿孔が起きた場合、菌が腹腔内に入り込んで腹膜炎が生じることがあります。
腹膜炎になると激しい腹痛が生じ、吐き気や嘔吐、腹部膨満感が伴うこともあります。
腹膜炎の原因となる子宮穿孔は、訓練された医師による手術であればほとんど起こることはないと考えてよいでしょう。
腹膜炎を防ぐためには、超音波ガイド下に手術を行ったり、抗生剤を投与したりすることなどが挙げられます。
子宮復古不全
子宮復古不全は、妊娠により大きくなった子宮が元の状態に回復するのが遅れる現象のことです。
妊娠12週以降に行う中期中絶手術後に起こることが多く、分娩後早期に弛緩出血が起こります。
弛緩出血とは、本来なら分娩後に子宮が収縮することで止まるはずの出血が続いてしまう状態のことです。
子宮内に遺残がある場合、遺残の除去や子宮収縮剤の投与、子宮の冷却、子宮の輪状マッサージなどで改善可能です。
子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)
子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)は、手術の際に傷がついたことによる外傷性癒着や結核菌による感染によって子宮腔癒着を起こすものです。
主な症状としては以下が挙げられます。
- 不育症:2回以上の流産や死産を繰り返す場合に呼ばれるもの
- 無月経:月経が来ないこと
- 過少月経:1周期あたりの総出血量が20ml以下のこと
- 月経困難症:月経に伴って起こる病的症状のこと
子宮腔癒着症を予防するためには、子宮内膜操作と感染症に対する対策を十分に行うことが挙げられます。
中絶手術で考えられる精神的リスク

中絶手術で考えられる精神的リスクとして、『中絶後遺症候群(PAS)』が挙げられます。
中絶後遺症候群はPTSD(心的外傷ストレス)の一種で、中絶手術に伴う身体的・精神的ストレスによって発症します。
主な症状は周囲に対する過剰反応や侵害行為、抑圧などです。
- 過剰反応:攻撃的行動、過剰警戒、集中障害、睡眠障害など
- 侵害行為:中絶手術のフラッシュバック、うつ状態など
- 抑圧:中絶に対する感情・考えの否定、中絶に関わった人を避ける、自殺企図など
上記のほか、摂食障害や無感情などの症状が現れることもあり、発症を防ぐには術前・術後のメンタルケアが非常に重要です。
中絶手術を安全に行うためのクリニック選びのポイント

中絶手術を安全に行うためには、クリニック選びが重要です。
以下のポイントを重視してクリニックを選びましょう。
- 中絶手術の方法
- 母体影響を考慮した麻酔投薬か
- 術前から術後までのサポート体制が整っているか
ここでは上記3つのポイントについてそれぞれ解説します。
中絶手術の方法
妊娠12週未満(11週6日まで)の中絶手術の場合、『搔爬法』と『吸引法』の2種類の手術方法があります。
それぞれの手術方法の特徴は以下の通りです。
搔爬法 | 吸引法 | |
手術方法 | スプーン状の医療器具や鉗子を使用して子宮内容物を掻き出す手術方法 | ストロー状の医療器具を使用して子宮内容物を吸い出す手術方法 |
特徴 | 古くから使用されている手術方法で医師の経験や技術に左右されやすい | WHOで初期中絶手術の世界標準として推奨されている手術方法 |
手術時間 | やや長い | 短い |
合併症の確率 | やや高い | 低い |
比較的身体への負担が少ないのは吸引法ですが、自分に合った方法を医師と相談のうえで決定することが大切です。
母体影響を考慮した麻酔投薬か
中絶手術を行う際は麻酔が投与されますが、クリニックによって投薬される麻酔薬に違いがあります。
中絶手術には全身麻酔を利用するのが一般的ですが、麻酔による呼吸抑制を防ぐため、複数種類の麻酔を併用しているクリニックもあります。
痛みや不安に対する配慮がされているクリニックを選ぶことで、身体的・精神的リスクを抑えられるでしょう。
術前から術後までのサポート体制が整っているか
中絶手術は身体的負担だけでなく、精神的負担も大きな手術です。
精神的リスクに挙げられる『中絶後遺症候群(PAS)』を防ぐためにも、術前から術後までのサポート体制が整っているクリニックを選びましょう。
まとめ
中絶手術には身体的リスクや精神的リスクが伴います。
手術によるリスクを完全に0にすることは不可能ですが、経験豊富な意思が在籍するクリニックや術前・術後のサポート体制が整っているクリニックを選ぶことで、少しでもリスクを抑えることが可能です。
スマイルレディースクリニックでは、中絶・中絶相談を受け付けています。
当院では検査・診断を受けていただき、しっかりと準備したうえで手術を行い安全性を高めているため、中絶手術のリスクに不安がある方は一度ご相談ください。